ショートステイは、福祉施設などに高齢者が短期間入所して介護を受けるサービスです。この記事では、ショートステイのサービス内容や費用、施設の選び方などをわかりやすく解説します。
在宅介護中の家族が休息を取ったり、冠婚葬祭などで一時的に介護が難しくなったりした場合に活用できます。ショートステイを利用するにはどうすればよいか、具体的な手続きの流れも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ショートステイとは?家族の介護負担を軽減する短期入所サービス

ショートステイは短期入所生活介護とも呼ばれる介護保険サービスで、要介護者が施設に短期間宿泊し、日常生活の支援や機能訓練などを受けられます。日帰りで利用するデイサービスとは異なり、宿泊を伴う点が大きな特徴です。
介護を行っている家族が休息を取ったり、病気や冠婚葬祭などで一時的に介護が困難になったりした場合に利用でき、介護者の身体的・精神的な負担を軽減するメリットがあります。
ショートステイを利用する主な目的3つ

ショートステイは、様々な目的で利用されています。最も多いのは、在宅で介護する家族の負担を軽減するための利用ですが、それ以外にも利用者の心身機能の維持や、将来的な施設入所を見据えた準備といった目的もあります。
ここでは、ショートステイを利用する主な目的を3つの観点から具体的に見ていきましょう。
介護者の休息(レスパイトケア)のため
在宅介護は身体的にも精神的にも大きな負担がかかるため、介護者が自身の時間を持ってリフレッシュしたり、休息を取ったりすることは非常に重要です。このような介護者の休息を目的とした利用は「レスパイトケア」と呼ばれています。例えば、介護者が旅行や趣味の時間を確保したい場合や、体調不良で休養が必要な時にショートステイを活用できます。
定期的に利用することで、介護者が心身の健康を保ち、介護疲れによる共倒れを防ぐことにもつながります。質の高い在宅ケアを継続するためにも、介護者自身の休息は不可欠です。
冠婚葬祭や出張など一時的に家を空けるため
介護者が冠婚葬祭や出張、病気や入院などで一時的に自宅での介護が困難になる場合にも、ショートステイは活用されます。1泊2日といった短い期間から、数週間にわたる利用も可能です。自宅を空けなければならない状況でも、専門スタッフのいる施設に預けることで、利用者は安心して過ごせます。
また、介護者も自身の用事に集中できるため、精神的な安心感を得られます。急な用事に対応してくれる施設もありますが、多くは事前の予約が必要です。予定が分かり次第、早めにケアマネジャーに相談し、利用可能な施設を探しておくことが重要となります。
将来の施設入所に向けた準備のため
将来的に特別養護老人ホームなどの介護施設への入所を検討している場合、その準備段階としてショートステイを利用するケースがあります。本人にとって、施設での集団生活がどのようなものかを体験する良い機会となり、本格的な入所への不安を和らげる効果が期待できます。
実際に施設で過ごしてみることで、雰囲気やスタッフの対応、他の利用者との相性などを確認できるため、本人に合った老人ホームや介護施設を選ぶ際の判断材料にもなります。また、施設側も利用者の心身の状態や性格を事前に把握できるため、スムーズな受け入れにつながります。
ショートステイは主に3種類!それぞれの特徴を解説

ショートステイの種類は、大きく分けて3つあります。これらは厚生労働省が定める人員や設備の基準によって分類されており、提供されるサービス内容や施設の形態に違いがあります。利用者の心身の状態や必要とするケアによって、適した施設は異なります。
ここでは、それぞれの種類の特徴を解説し、どのような場合にどのタイプが適しているのかをわかりやすく説明します。
短期入所生活介護(従来型個室・多床室)
短期入所生活介護は、特別養護老人ホームなどに併設されていることが多く、食事や入浴、排泄などの日常生活上の支援や機能訓練を受けられるサービスです。
居室のタイプには、複数のベッドが同じ部屋にある「多床室」や、廊下を挟んで部屋が並ぶ従来型の個室があります。多床室は、他の利用者とコミュニケーションが取りやすい一方で、プライバシーの確保が難しい側面もあります。
費用は個室に比べて安価に設定されているのが一般的です。特別養護老人ホームなどに併設される形態のほか、ショートステイ専門の「単独型」の施設も存在します。
短期入所生活介護(ユニット型個室)
ユニット型個室は、全室個室でプライバシーが確保されているのが特徴です。10人程度の少人数のグループを1つの生活単位(ユニット)とし、それぞれのユニットに専用の共同生活スペース(リビングや食堂など)が設けられています。
これにより、利用者一人ひとりの個性や生活リズムを尊重した、家庭的な雰囲気の中できめ細やかなケアを受けられます。なじみのスタッフや他の利用者と密な関係を築きやすいのも利点です。特別養護老人ホームや地域密着型施設に併設されている場合が多く、費用は多床室に比べて高くなる傾向があります。
短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
短期入所療養介護は、一般的に「医療型ショートステイ」と呼ばれ、医療的なケアを必要とする方を対象としています。このサービスは、介護老人保健施設(老健)や療養病床を持つ病院、介護医療院などで提供されます。
施設には医師や看護職員が常駐しており、痰の吸引や経管栄養、インスリン注射といった医療処置のほか、専門的なリハビリテーションも受けられます。退院直後で在宅生活に不安がある場合や、病状が不安定な方の受け入れも可能です。利用には医師による医学的な管理下での介護が必要であるとの判断が求められます。
ショートステイのサービスを利用できる対象者とは?

ショートステイの対象者は、原則として65歳以上で、要介護認定において「要支援1・2」または「要介護1~5」のいずれかの介護度と判定された老人です。認知症の方も利用できます。また、40歳から65歳未満の方でも、特定疾病により要介護認定を受けていれば対象となります。
短期入所療養介護を利用する場合は、さらに病状が安定しており、入院治療の必要はないが、医学的管理下での介護や看護、リハビリが必要と判断される必要があります。障害者総合支援法に基づく短期入所(ショートステイ)もあり、そちらは障害支援区分が認定されている方が対象です。
ショートステイで受けられる具体的なサービス内容

ショートステイで受けられるサービス内容は多岐にわたりますが、基本的には食事、入浴、排泄などの身体介護が中心です。これに加えて、看護師による健康管理や、理学療法士などによる個別の機能訓練(リハビリ)も提供されます。
多くの施設では、他の利用者と交流できるレクリエーションやイベントも企画されており、心身機能の維持・向上や認知症の予防を目指します。また、自宅と施設の間の送迎サービスを実施している施設も多くあります。これらの内容は通所介護(デイサービス)と共通する部分もありますが、宿泊を伴う点が異なります。
ショートステイの利用にかかる費用の目安と内訳

ショートステイの利用にかかる費用は、介護保険が適用される「介護サービス費」と、保険適用外で全額自己負担となる「滞在費」「食費」「その他費用」の合計で決まります。
費用相場は、利用する施設の種類(従来型個室、多床室、ユニット型個室など)や要介護度によって大きく変動します。ここでは、費用の内訳を詳しく解説し、具体的な自己負担額の目安を紹介します。
介護保険が適用される費用
介護保険の対象となるのは、施設から提供される介護サービスにかかる費用です。この費用は、利用者の要介護度や施設の種類、部屋のタイプ(多床室、従来型個室など)に応じて単位数が定められており、単位数に地域ごとの単価を乗じて算出されます。利用者は、そのうちの所得に応じた負担割合(原則1割、一定以上の所得がある場合は2割または3割)を支払います。
具体的な負担額は、要介護度が高いほど、また、手厚い人員配置の施設ほど高くなる傾向があります。ケアプランを作成するケアマネジャーに確認すれば、利用したい施設での具体的な費用を見積もってもらえます。
介護保険適用外で自己負担となる費用
介護保険の適用外となる費用は、全額が自己負担です。主な内訳は、部屋代にあたる「滞在費」と「食費」です。これらの金額は、施設の形態(公的か民間か)や部屋のタイプ(個室か多床室か)によって異なり、各施設が独自に設定しています。
一般的に、有料老人ホームなどの民間施設は公的施設よりも高めに設定される傾向があります。このほか、理美容代、特別な食事、レクリエーションの材料費など、日常生活に必要な費用も別途有料で請求される場合があります。利用前に、どの項目が自己負担になるのかを施設にしっかりと確認しておくことが重要です。
後悔しないためのショートステイ施設の選び方で重要なポイント

ショートステイは、利用者が自宅を離れて過ごす場所となるため、施設選びは非常に重要です。料金や立地だけでなく、本人が快適かつ安心して過ごせる環境かどうかを見極める必要があります。
後悔しないための選び方として、施設の設備やスタッフの対応、医療ケアの受け入れ体制など、事前に確認すべき注意点がいくつかあります。ここでは、本人に合った施設を見つけるための重要なポイントを解説します。
施設の設備や居室の環境は整っているか
施設を見学する際は、まず清掃が行き届いているか、施設全体が清潔に保たれているかを確認しましょう。また、手すりの設置や段差の解消など、バリアフリーへの配慮が十分かも重要なポイントです。居室については、広さや日当たり、収納スペースなどをチェックし、本人がくつろげる環境かを確認します。
特にプライバシーを重視する場合は個室が望ましいでしょう。食堂や談話室といった共用スペースが、利用者がリラックスして過ごせるような雰囲気かどうかも見ておきたい点です。連続30日を超えるようなロング利用を想定している場合は、特に居室の快適性が生活の質に大きく影響します。
スタッフの対応や施設の雰囲気は良いか
施設のハード面だけでなく、そこで働くスタッフの対応や全体の雰囲気も非常に重要な判断材料です。見学時には、スタッフが利用者に対してどのような言葉遣いや態度で接しているか、表情は明るいかなどを注意深く観察しましょう。スタッフ同士のコミュニケーションが円滑に行われているかも、職場環境の良し悪しを判断する上で参考になります。
また、施設全体に活気があるか、他の利用者がどのような表情で過ごしているかも確認したいポイントです。特にロングショートの利用を考えている場合、スタッフとの信頼関係が築けるかどうかは、本人が安心して過ごすために不可欠な要素となります。
医療ケアやリハビリの体制は十分か
持病がある方や医療的なケアが必要な方が利用する場合、施設の医療体制の確認は必須です。看護師が24時間常駐しているか、日中のみの配置か、協力医療機関との連携はどのようになっているか、緊急時の対応マニュアルはあるかなどを具体的に質問しましょう。受け入れ可能な医療処置(インスリン注射、経管栄養など)の範囲も事前に確認が必要です。
また、リハビリを希望する場合は、理学療法士などの専門職が配置されているか、どのような内容の訓練をどのくらいの頻度で受けられるのかを確認します。特にロングショートステイでは、日々の健康管理や身体機能の維持が重要になるため、医療・リハビリ体制の充実は欠かせません。
利用者の希望に合ったレクリエーションがあるか
ショートステイ中の生活の質を高める上で、レクリエーションやイベントの内容も大切な要素です。ただ預かってもらうだけでなく、日中の時間を楽しく過ごせるかどうかは、本人の満足度に大きく影響します。体操や歌、手芸、書道といった活動から、季節ごとの行事まで、施設によって様々なプログラムが用意されています。
本人の趣味や興味に合ったレクリエーションがあるか、参加は自由か、どのような雰囲気で行われているかなどを確認しましょう。身体機能の維持や認知機能の活性化だけでなく、他の利用者との交流を促す貴重な機会にもなります。可能であれば、見学時にレクリエーションの様子を実際に見せてもらうのがおすすめです。
まとめ

ショートステイは、介護者の休息や急な用事への対応、将来の施設入所の準備など、多様な目的で利用できる短期入所サービスです。施設には「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」があり、必要なケアの内容に応じて選択します。費用は介護保険サービス費に加え、滞在費や食費などの自己負担分がかかります。
施設を選ぶ際は、設備や雰囲気、スタッフの対応、医療体制などを総合的に確認し、本人に合った場所を見つけることが求められます。利用を検討する際は、まず担当のケアマネジャーに相談し、希望や条件を伝えた上で、適切な施設を紹介してもらうことから始めるとよいでしょう。
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監修者 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長会 斉藤 正行
一般社団法人全国介護事業者連盟理事長。立命館大学卒業後、複数の介護関連企業で要職を歴任し、日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。講演活動やメディア出演も多数。






