「喘息持ちだと寿命が短くなるのでは」という不安を抱えている人に向けて、医学的な見解と寿命への影響を最小限にするための情報を解説します。喘息は、適切な治療と生活習慣の見直しによって、症状をコントロールできる病気です。
この記事では、喘息と寿命の関係、症状の重症度を判断する目安、具体的な治療法、そして日常生活で実践できるセルフケアの方法を詳しく紹介します。正しい知識を身につけ、前向きに治療に取り組むための指針を示します。
喘息があると寿命は短くなるのか?医学的な見解を解説

喘息という疾患自体が直接的に寿命を縮めるわけではありませんが、重症の発作は呼吸困難を引き起こし、命に関わる危険性があります。しかし、現代の医療では効果的な治療薬が開発されており、医師の指示に従って適切に治療を続ければ、喘息の症状をコントロールすることは十分に可能です。
治療によって発作を予防し、安定した状態を維持できれば、喘息がない人と変わらない平均寿命を全うすることが期待できます。実際に、治療法の進歩により、喘息による死亡者数は大幅に減少しています。
寿命に影響する喘息の重症度セルフチェック

喘息の重症度は、寿命への影響を考える上で重要な要素となります。
週に1回以上、夜間に咳や息苦しさで目が覚める、会話をするのが苦しい、発作治療薬を頻繁に使用する、といった症状は、コントロールが不十分のサインです。
また、横になると呼吸が苦しくなり、座らないと楽にならない状態は、重い発作の兆候であり、速やかな医療機関の受診が求められます。
自分の症状の頻度や程度を正確に把握し、医師に伝えることが、適切な治療計画を立てる第一歩となります。これらの症状に心当たりがある場合は、自己判断せず専門医に相談することが不可欠です。
健康な人と変わらない寿命を目指すための喘息治療

喘息治療の主な目的は、気道の炎症を抑えて症状をコントロールし、発作を予防することにあります。これにより、日常生活への支障をなくし、健康な人と変わらない生活の質を維持することを目指します。
喘息の薬物治療は、日々の症状を管理するための「長期管理薬」と、急な発作に対応するための「発作治療薬」の二つが中心となります。これらの薬を医師の指示通りに正しく使い分けることが、喘息を安定させ、長期的な健康を保つための鍵となります。
症状をコントロールする長期管理薬の役割
長期管理薬は、喘息の根本原因である気道の炎症を継続的に抑え、発作を予防するために用いられます。代表的なものに吸入ステロイド薬があり、症状がない時でも毎日使用を続けることで、気道を安定した状態に保ちます。
この薬は、あくまで発作が起きないようにするための予防薬であるため、自己判断で中断してしまうと、気道の炎症が再燃し、かえって症状を悪化させる危険性があります。医師から処方された用法・用量を守り、根気強く治療を継続することが、喘息コントロールの基本です。
急な発作の苦しさを和らげる発作治療薬
発作治療薬は、喘息の発作が起きてしまった際に、狭くなった気道を速やかに広げて呼吸の苦しさを和らげるために使用します。
リリーバーとも呼ばれ、即効性があるため、急な症状の緩和に役立ちます。しかし、この薬はあくまで一時的な対症療法であり、気道の根本的な炎症を治すものではありません。
したがって、発作治療薬の使用頻度が高いということは、長期的なコントロールがうまくいっていない証拠です。使用回数が増えてきた場合は、現在の治療法を見直す必要があるため、速やかに主治医に相談しなくてはなりません。
喘息の悪化を防ぎ健康寿命を延ばす5つの生活習慣

喘息の管理においては、薬物治療と並行して日々の生活習慣を見直すことが極めて重要です。アレルゲンの除去、感染症の予防、禁煙、ストレス管理、そしてバランスの取れた食生活は、いずれも気道の炎症を抑え、発作の引き金となる要因を減らすために不可欠です。
これらの習慣を継続的に実践することは、喘息の症状を安定させるだけでなく、全身の健康状態を向上させ、結果として健康寿命を延ばすことにもつながります。治療効果を最大限に高めるために、日常生活の中から改善できる点に取り組んでいきましょう。
アレルゲンとなるホコリやカビを住環境から除去する
喘息の症状を引き起こすアレルゲンは、日常生活の中に潜んでいます。
特に、ハウスダスト、ダニの死骸やフン、カビ、ペットのフケなどは、代表的な室内アレルゲンです。これらの物質を吸い込むことで気道にアレルギー反応が起こり、発作の引き金となります。
対策として、こまめな掃除機がけ、布製のソファやカーペットを避ける、寝具の洗濯や防ダニカバーの使用、そして除湿器や換気による湿度管理でカビの発生を防ぐことが有効です。住環境を清潔に保ち、アレルゲンを可能な限り減らす努力が、症状の安定化には欠かせません。
風邪やインフルエンザといった感染症を徹底予防する
風邪やインフルエンザなどのウイルスによる呼吸器感染症は、喘息患者にとって症状を悪化させる大きな要因となります。
ウイルスに感染すると気道の粘膜に炎症が起こり、喘息の症状が急激に悪化し、重い発作を誘発することがあります。そのため、日頃からの感染予防策が非常に重要です。
具体的には、外出後の手洗いやうがいの徹底、人混みを避ける、十分な休養と栄養を摂って免疫力を維持することなどが挙げられます。また、毎年インフルエンザの予防接種を受けることも、重症化を防ぐ上で効果的な対策の一つです。
禁煙を実践し受動喫煙も避ける
タバコの煙は、喘息の症状を悪化させる最も避けるべき要因の一つです。
煙に含まれる有害物質が気道を直接刺激し、炎症を悪化させるだけでなく、長期的に気道にダメージを与え続けます。さらに、喫煙は吸入ステロイド薬などの治療薬の効果を弱めることも報告されています。
患者自身の禁煙はもちろんのこと、家族や職場の同僚など、周囲の人が吸うタバコの煙を吸い込む受動喫煙も同様に有害です。喘息のコントロールを良好に保つためには、自身が禁煙するとともに、煙のない環境を確保することが絶対条件となります。
過度なストレスを溜め込まない工夫
精神的なストレスや疲労は、自律神経のバランスを乱し、喘息の症状を悪化させる一因となることがあります。
ストレスを感じると気道が収縮しやすくなり、発作が誘発される可能性があります。日常生活からストレスを完全になくすことは困難ですが、自分に合った方法で上手に発散させることが重要です。
十分な睡眠時間を確保する、軽いウォーキングなどの適度な運動を取り入れる、趣味に没頭する時間を作るなど、心身をリラックスさせる習慣を意識的に持ちましょう。心穏やかに過ごすことは、身体の状態を安定させ、喘息のコントロールにも良い影響を与えます。
栄養バランスを意識した食生活のポイント
特定の食品が喘息を直接治すわけではありませんが、日々の食生活は体全体の健康状態を左右し、喘息の管理にも間接的に影響します。特に肥満は、呼吸機能に負担をかけ、喘息の症状を悪化させることが知られているため、適正体重を維持することが重要です。
インスタント食品や脂質の多い食事に偏らず、ビタミンやミネラルが豊富な野菜や果物を多く含む、バランスの取れた食事を心がけましょう。ただし、特定の食物がアレルギーの原因となって喘息を引き起こしている場合は、医師の指導のもとで原因食物を避ける必要があります。
大人の喘息と子どもの喘息で異なる完治の可能性

喘息は発症する年齢によって、その後の経過が異なる傾向があります。
アトピー型が多い小児喘息では、身体の成長に伴って気道が広がり、免疫機能が発達することで、思春期頃までに症状が自然に軽快したり、消失したりするケースが少なくありません。これを寛解と呼びます。
一方、成人になってから発症した喘息は、アレルギー以外の多様な要因が関与していることが多く、気道の炎症が慢性化しているため完治は難しいとされています。そのため、成人喘息の治療目標は、完治ではなく、症状を適切にコントロールし続けることです。
まとめ

喘息が直接寿命を縮めるわけではなく、適切な治療と自己管理によって、そのリスクは大幅に低減できます。現代医療における治療の進歩により、多くの患者が症状をコントロールし、健康な人と変わらない生活を送っています。
重要なのは、長期管理薬で気道の炎症を抑え、発作の引き金となる生活習慣を改善することです。重症の発作は命に関わるため、自己判断で治療を中断せず、定期的に専門医の診察を受けることが不可欠です。
正しい知識を持ち、医師と連携しながら治療を継続することで、喘息による寿命への影響は最小限に抑えられます。
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監修者 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長会 斉藤 正行
一般社団法人全国介護事業者連盟理事長。立命館大学卒業後、複数の介護関連企業で要職を歴任し、日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。講演活動やメディア出演も多数。






