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自立支援介護における4つの基本ケアとは?事例を交えてわかりやすく解説

「介護施設では自立支援介護に取り組んでいると言われたけどよくわからない」「自立支援会介護の4つの基本ケアについて知りたい」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

自立支援介護には4つの基本ケアがあり、水分・食事・運動・排泄に関わる内容です。

この記事では、自立支援介護の4つの基本ケア、実践すると期待できる効果、介入する際の事例や注意点について解説します。

自立支援介護について知りたい方は、読んでみてください。

自立支援介護とはその人らしく生活するためのサポート

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自立支援介護は竹内孝仁によって提唱されており、水分・食事・運動・排泄のケアをおこなうと、日常生活動作や要介護度の改善に期待できるとされています。

日常生活動作が改善できると、日々の生活が楽になるだけでなく、本人の自尊心も保てます。

高齢になり、食事や排泄、入浴などで介護が必要になると「何もできなくなってしまった」と感じる方は少なくありません。

しかし、自立支援介護により日常生活動作を改善できると、その人らしい生活が送れるようになります。自尊心を保ち、満足感のある日々を過ごせるでしょう。

自立支援介護の4つの基本ケア

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自立支援介護の4つの基本ケアは、以下のとおりです。

  • 水分
  • 食事
  • 運動
  • 排泄

それぞれ内容を解説するので、今後取り組むときの参考にしてください。

この記事は「コンテンツポリシー」に沿って執筆しています。
目次

水分

自立支援介護における水分は、1日1,500ml程度の摂取が目標です。

人間に必要な水分は1日2.5Lとされており、食事から1L、体内で作られる水分が0.3Lです。1日1,500mlの水分摂取により、高齢者に多い脱水や便秘の予防に期待できます。

高齢者は、喉の渇きを感じにくく、水分摂取の機会が少ないため、脱水を起こすケースが少なくありません。

厚生労働省によると、体内にある水分の5%を失うだけで脱水になってしまうのです。

介護の現場では、定期的に朝食・昼食・夕食以外にも、おやつの時間などを利用して水分摂取を促しています。

脱水を予防するために、定期的な水分摂取が必要といえるでしょう。(文献1

食事

自立支援介護の提唱では、食事で1日1,500kcal以上摂取し、できるだけ自分で食べてもらうことを目標にしています。

厚生労働省によると、高齢者が1日に必要な摂取カロリーは1,450〜2,100kcalとされています。(文献2

食事が摂取できると低栄養を予防でき、日常生活動作を維持できます。

運動

運動は、1日約30分の習慣を目標としています。1日30分の運動をおこなうと、筋肉の維持に期待できます。

筋肉が維持できれば、入浴や排泄などの動作で介護が必要になる状態を予防できます。

毎日30分の運動は、難しく感じるかもしれません。

しかし、運動にはトイレや食堂までの歩行、入浴、リハビリなど日々の生活が含まれるため、難しくはありません。

介護の現場では、意識的に動いてもらえるよう声かけが大切です。

排泄

自立支援介護における排泄は、3日以内に自然排便できる習慣を作ることを目標としています。

通常、食事を摂ると24~48時間で便として排泄されます。

しかし、高齢になると、運動量や水分摂取量が低下して、腸の動きが弱くなり、便秘になってしまうのです。

便秘になると、食事を食べなくなったり、嘔吐したりする可能性が高くなります。

3日以内の排泄をおこなうためには、先ほど解説した水分・食事・運動の取り組みが大切です。(文献3

自立支援介護を実践すると期待できる効果

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自立支援介護を実践すると期待できる効果は、主に3つです。

  • 要介護度の進行予防
  • 家族の介護負担の軽減
  • 金銭的負担の軽減

それぞれ解説するので、メリットを理解して実践しましょう。

要介護度の進行予防

自立支援介護を実践すると、要介護度の進行予防に期待できます。

要介護度が維持できると、自宅へ帰宅したり、外泊したりするときに、これまでと同様の介護量で生活ができます。

介護度が高くなると、自宅へ帰ったときの介護量が高くなるため、自宅へ帰る選択ができないかもしれません。

自宅へ帰りたい意欲がある方には、自立支援介護の取り組みは重要といえます。

家族の介護負担の軽減

自立支援介護に取り組み、日常生活における介護量が維持できたり、少なくなったりすると、家族の介護負担の軽減に期待できます。

家族の介護負担を軽減できると、自宅で過ごせる機会が増加して、本人が満足できる生活を送れるでしょう。

金銭的負担の軽減

自立支援介護に取り組むと、金銭的負担の軽減にも期待できます。

高齢になると身体機能が低下する可能性が高く、さまざまなサービスを利用します。

トイレが一人で行けない状態になると、おむつを使用したり、施設を検討したりする場合もあるでしょう。

利用するサービスが増えたり、おむつの使用や施設に入居したりすると、金銭的な負担が増えます。

生命保険文化センターによると、介護にかかる費用は、自宅では平均4.8万円、施設では平均12.2万円と報告されています。(文献4

自立支援介護を実践すると現在のADLを維持に期待できるため、今までと同じ量のサービスで生活が可能となり、金銭的な負担を軽減できるのです。

介護現場における自立支援の例

リハビリ病院 選び方

介護現場における自立支援の例を2つ紹介します。

  • 内服管理を自分でできるようにしてもらう
  • トイレ動作を確認して声かけをおこない実践してもらう

介護現場ごとにさまざまな取り組みがあるため、今回解説する例を参考にしてください。

内服管理を自分でできるようにしてもらう

認知機能の低下があり、今後自宅へ帰ることを目標にしている方に介入した例です。

今まではスタッフが薬を渡していましたが、自宅に帰るにあたりカレンダーを利用するよう介入しました。

薬を飲む際は水分も必要なため「コップ1杯の水を飲みましょう」と記載した札も作成しました。

数日練習した結果、薬は一人で飲めるようになり、水分摂取量も増加したのです。

トイレ動作を確認して声かけをおこない実践してもらう

骨折した高齢の方が手術後にベッドで過ごす期間が長くなってしまい、おむつでの排泄が日常になっているケースに介入した例です。

リハビリの方と情報共有をおこない、立ち上がった状態を保てる筋力があることがわかりました。

本人と相談し、時間を決めてトイレへ行くことを決めました。

数日は車椅子からトイレへ移動する動作のみ可能でしたが、筋力が回復するとズボンを下げる動作などできることが増えたのです。

その後もリハビリやトイレ誘導を実践し、車椅子であれば一人でトイレに行けるまで機能が向上しました。

自立支援介護のデメリット

独居生活

自立支援介護のデメリットは、下記のとおりです。

  • 個人の積極性がなければ介入しても効果が少ない
  • 自立支援介護を実践しても必ず効果があるとは限らない

自立支援介護はよい効果に期待できますが、デメリットもあるので理解しておきましょう。

個人の積極性がなければ介入しても効果が少ない

自立支援介護は、本人の意欲があってこそ効果に期待できます。

意欲がない方に介入すると拒否されることが多く、日常生活の改善には期待できません。

また、無理に介入できても施設内だけの実践となり、自宅に帰ってからは続かないケースもあるのです。

積極性がない場合は、本人の意思を尊重して無理な実践は控えましょう。

自立支援介護を実践しても必ず効果があるとは限らない

自立支援介護を実践しても、必ず効果があるとは限りません。

認知症や難病など進行する病気の方に自立支援介護を実践しても、効果は期待できないのです。

たとえ意欲的に取り組めても、改善する見込みがなければ本人の意欲低下につながるかもしれません。

自立支援介護を実践しても、必ず効果が出るとは限らない点を理解しておきましょう。

自立支援介護の4つの基本ケアを実践するときの注意点

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自立支援介護の4つの基本ケアを実践するときの注意点は、以下のとおりです。

  • ADLを把握する
  • 本人の状態に合わせて実践する
  • 本人の意欲や目標がない場合は無理に実践しない

注意点を解説するので、自立支援介護に取り組むときの参考にしてください。

ADLを把握する

自立支援介護を実践するためには、入浴や排泄・食事の動作などADLの把握が大切です。

ADLを把握しなければ、日常生活におけるできる動作・できない動作がわかりません。

どこまでできるのか理解していない状態では、本人に無理をさせたり、できることに介入したりしてしまいます。

自立支援介護を実践する際は、リハビリ職や他のスタッフとADLを共有し、スタッフ全体で介入できるようにしましょう。

本人の状態に合わせて実践する

自立支援介護は、本人の状態に合わせて実践しましょう。

先ほど水分は1日1,500mlの摂取が目標であると解説しました。

しかし、心不全や腎機能の低下がある方に水分を1,500ml摂取してもらうと、体がむくんだり、状態が悪化したりする可能性があります。

また、運動は1日30分が目標とされていますが、歩けない状態の方や疲労を感じやすい方に30分は現実的ではありません。

自立支援介護は、誰にでも実践してよいわけではありません。

本人の状態や疾患に合わせて、できる範囲で介入しましょう。

本人の意欲や目標がない場合は無理に実践しない

先ほども解説したように、本人の意欲・目標がない場合、無理に実践しても効果に期待できません。

まずは、本人が「できるようになりたい」「自宅に帰りたい」など、目標があるかを確認しましょう。

本人に目標がある場合は、現実的に達成できるのか判断したうえで、他職種と話し合い、介入する内容を決めましょう。

まとめ|高齢者の意向に沿って自立支援介護を実践しよう

外出 老人ホーム

自立支援介護は、水分・食事・運動・排泄に対して介入する方法です。

自立支援介護を実践すると、要介護度の維持や介護負担の軽減に期待できます。

しかし、自立支援介護で推奨されている内容は、誰にでも介入できるものではありません。

自立支援介護をおこなう場合は、本人の希望があるのか、疾患や体調、現在の状態を観察してから介入するのか判断しましょう。

いいケアジャーナルでは、介護保険法や介護施設の特徴などコラムを掲載しています。介護について知りたいことがある方は、他の記事も読んでみてください。

自立支援介護における4つの基本ケアが気になる方からよくある質問

自立支援で大切なことは何ですか?

自立支援で大切なことは、本人の意向を尊重することです。

意欲的ではない方に自立支援介護を実践しても、本人のためにはなりません。

自立支援介護は介護者主体ではなく、本人の希望に合わせて実践しましょう。

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